【SS】イベント05 冒険開始!(その3-2)

○参加冒険:伝説のケーキ作り

○山吹弓美(北国人+犬士+歩兵)
○阿木高麻緒(北国人+犬士+歩兵)

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君は知っているか。
え~藩国に伝わる伝説を!
君は知っているか。
伝説の地鶏ケーキを!!
この物語は、お菓子作りを国是とするえ~藩国国民の血と汗と涙と食い意地をかけた物語である!!!

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昼間

「あのぅ」
「何かな、麻緒さん」

寒そうな外の景色を窓越しに見ていた阿木高麻緒(あきたか まお)は、机の上に突っ伏して顔も上げないまま呟いた。
その呟きに律儀に答える山吹弓美(やまぶき ゆみ)。
なんとなく、間に落ちる沈黙。

え~藩国~、ふぁいっおー、ふぁいっおー、ふぁいっおー・・犬敵ひっさーつ・・・

二人の居る部屋の外を、彼女らと同じ軍服を着た犬耳歩兵一個小隊が掛け声をかけながら走っていく。今日は夜戦訓練の日で朝からずっと走り続けている。

「この藩国なのですけど、娯楽に乏しいと思うのですよ」
「まぁ、そうだね。支度金として本国から頂いた分だけじゃこの先不安だし」

窓の外では、遅刻して来たらしい犬耳歩兵が謝りながらランニング集団にダッシュしていく。
突然伏していた頭と耳を起こし、それと尻尾をぶんぶん振って山吹に急接近する阿木高。

「はい、とゆーことでっ!お菓子の国といえばえ~藩国!と言う不動の立場を確立するためにですね、伝説にあるすごいお菓子を一発どどーんと作って大々的に宣伝してえ~藩国サイコーとっ!」
「伝説のお菓子?そんなものうちの国にあったんだ・・」
「あったのですよ、今日の新聞に載ってたのですよこの記事にほらここの囲み記事に材料と作り方と好きな人へ渡すときのシチュエーションが」
「・・・」
「是非、協力して下さいなのですよ弓美さんっ!目指すは伝説のケーキなのですよ、えいえいおー!」
「お、おー・・・」

燃える瞳に成功の確信を宿した阿木高は、山吹の手をがっちり握り締めて仲間の誓いを確かなものとしたのだった。
窓の外では遅刻してきたらしい犬耳歩兵が、別の犬耳歩兵からアクスボンバーを食らって吹っ飛ばされる。転がる転がる転がる木に激突追い討ち追い討ち。
吹っ飛ばされていく犬耳歩兵を横目に、二人の犬耳歩兵の後頭部には大きな汗マークが張り付いていた。

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ケーキ。一般的なケーキと言うと、スポンジケーキにクリームを塗り果物などをトッピングしたものが思い浮かぶ。甘いクリームに苺の酸っぱさ。ほんのりビターなチョコレート。クッキーの土台の上にクリームチーズ。お年寄りだけじゃなく若者にも人気の抹茶フレーバー。

「そうだよね、美味しいよねケーキ」
「なのですよー♪」
「じゃあ私たちの目の前にある、コレは何なんだーーー!!」

すぱーん!
手近にあったヘラで阿木高の後頭部を張り飛ばす山吹。
厨房の中を派手に転がってケーキの型の山に頭から突っ込むが、元気に跳ね上がってくる。

「いったー、何をするのですかとー?」
「うるさいよっ、私たちはケーキ作ってたんじゃないの!?どうして地鶏型になるわけ!?」
「やー、ビックリですねあっはっはー☆」
「あっはっはーじゃないよ、確かに手羽先を作る時点で何か変だなーとは思ったけどっ!?」

すぱぱーん!!

「そこまで作っといて気付かないのもどうかとー」
「OKOK,私も現実を受け入れましょ、もうどの辺が伝説だか分かんないけど・・ケーキって言うからには食べられるのよね?」
「オフコース♪もちろん食べられるのですよ。いやいや、福翠地鶏の卵をふんだんに使ってあるので、味の方は保障済みなのですっ!」
「この季節の福翠地鶏から?何て無謀な・・ところで麻緒ちゃん、目測だけどこのケーキ5mはあるよね」
「こちらにハシゴがあるので、私は頭からお先に試食してみるのですよとって・・・ほえ?」

ハシゴに手をかけた阿木高の犬耳が、何かの気配を察知したのかぴくりと動く。二人は揃って厨房の外を見ると、巨大な土煙と地響きが近づいていた。

ずどどどどどどどどどどどどどどどどどど・・・

「じ、地鶏なのですよっ、福翠地鶏の鶏群がえーと・・・一個大隊はいるのですよっ!」
「ちょっと、まっすぐこっちに向かってきてる!?」
「はうあっ、あのひときわ大きくて片目が潰れた地鶏はあの時のっ!?たかだか100個や200個の卵で復讐しに来るとは何て心の狭いっ!トサカですか、トサカに来ているのですねっ!」
「ちょ、何この展開」
「うわー、来たーーーー!!」

         衝 撃


         爆 発


    厨  房  大  崩  壊


一気に厨房へ突入してきた地鶏は阿木高と山吹ほか全てを蹂躙する。
片目の潰れたボス級地鶏は伝説ケーキによじ登ると、背中に足をかけて羽を広げると高らかに嘶いた。
なんと、地鶏たちがケーキの中に潜っていく!目の部分に光が灯る!足がゆっくりと動きだし、一歩、そして二歩と地面を踏みしめる。
地鶏の詰まった地鶏型ケーキはガレキの山となった厨房を飛び出し、まるで飛ぶように駆けていった。
地鶏の足跡だらけで倒れた二人を残して。

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「あーもしもし、こちら観測班A。目標発見、確かに地鶏型のケーキが走ってます」
「私もう帰っていいかな」
「こちら観測班B、走るケーキ、街道を北上中です」
「被害は?」
「家屋が一棟全壊、訓練兵が2名軽傷の他はありません」
「そう、じゃあ主上に同様の報告をしてくれる?」
「こちら観測班A、主上は子供達と一緒になってケーキを追いかけてます。すごい楽しそうですがどうしましょう?」
「連れ戻しなさい」
「了解」

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え~藩国にまた一つ伝説が加わった。
地鶏ケーキ、その名が世界に広まるかどうか、今はまだ分からない。


○冒険結果: 中間判定 :得たお宝: C 8娯楽2万t :ユニークな結果:なし
コメント:走って逃げるケーキが出来ました。まあ誰も食べれないでしょうが、話のネタにはなりました。


(著:辻井つなみ(nt))

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