【SS】イベント05 冒険開始!(その1)

○参加冒険 女だけのケーキ作り

○一柳鈴子(北国人+犬士+歩兵)


某日、私こと一柳鈴子が無人の会議室でのんびりお茶していると、突然主上から通信が入りました。説明しておくと、主上とはわが国で使われている藩王の呼称です。某小説から取っていることに気がついても黙っていてください。
「ちょっと鈴子さんお願い聞いてー。俺、今ケーキ作ろうとしたらさ、アーサがクリームの風呂で溺れたうえにシナモンスティックが鼻に引っかかって大ピンチ」
「・・・はい?」
「そんなわけで、代わりに鈴子さんが河原でケーキを焼くのだ。種類は問わないからウマイのをよろしく」
「あの、ちょっと主上なんで私がっ!」
ツー・ツー・ツー
切れた。一方的に通信切りやがったよ主上。だいたいなんで私がケーキなんですか。他にケーキ作り得意な人がいるでしょうに。
「それはキミが女性と明言しているからさ」
会議室を出てすぐの廊下で主上発見。大きな壺の影に隠れたからって、丸見えなんですが。
「主上、ケーキ作るのはいいんですが、どうして河原かご説明願えませんか」
「次はオセロだ!負けないぞ~」
主上は叫ぶと、脱兎のごとく自身の執務室へ飛び込んだ。要するにこれは嫌がらせなんですか?こないだUNOで私が一人勝ちしたの、根に持ってるんですか?あれ、勝ったのたまたまなんですが・・・。

それから2時間後。
私は王城から1kmほど離れた河原にたどり着きました。
えっちらおっちら引っ張ってきたリヤカーの中にはケーキの材料とボウル、軽量カップ、泡だて器などの調理器具。ダッチオーブンという、キャンプでケーキが焼ける鍋みたいなのも入っています。
さあ、ちゃっちゃと作って早いとこ帰りましょう。
まずは手ごろな大きさの石と薪になる小枝を集めて火をおこしました。体力はあるほうじゃないので、これだけで尻尾へにゃり。
一休みして景色を眺めていると、近くの牧場で主上がホルスタインに追いかけられていました。私を監視しに来ていたのでしょうか。その傍で透さんと摂政の朝戸さんが爆笑しています。藩王と摂政が一緒に城を空けても平気だなんて、え~藩国はスバラシイ国ですね。ていうかあなた達全員UNOのメンバーでしたね。

気を取り直してケーキ作り開始です。最初はスポンジ作りから。卵はわが国自慢の『福翠の卵』、砂糖はこれも自慢のてんさい糖『羽三本(わさんぼん)』(誤字にあらず)。美味しくできないわけがありません。温まったダッチオーブンに入れて、焼けるまでの間にホイップクリームを作ります。
電気が無いので泡だて器でガチャガチャとホイップしますが、先にやったメレンゲの影響か、腕のだるさがもう限界。そこに・・・。
「あっ!アーサ、待て!」
主上の叫び声。何事?と振り返ると、目前で王犬のアーサがこちらへダイビング。
手にしたボウルごと、私はひっくり返ってしまいました。私はクリームでべとべと、アーサはボウルに顔を突っ込んで持ち上げ、尻尾をパタパタさせながら主人の下へ帰っていきます。アーサ、私はあなたに何かしましたか?それともこれも主上の策略ですか?
体に付いたクリームをふき取ってぐったりしていると、今度はダッチオーブンから煙がモクモクと。あら、火加減を間違えたみたいって、やばいでしょっ!
パニックになってミトンをつけるのを忘れてオーブンに触り、アチチと手を放してオーブンは地面に落下。黒焦げのスポンジが出てきてがっくし。もう失敗なんてレベルじゃありません。
恐る恐る後ろを振り返ると、牧場の柵の向こうで主上以下2名と逃げ帰ったアーサがこっちを覗き見ています。
もういっそこのまま河に飛び込んでしまおうか。訳わかんない命令のうえに失敗続きで私の心はズタボロでした。
「もう嫌だー!主上のあほーーーーっ!」
焦げたスポンジが入ったダッチオーブンを持ったまま、勢いに任せて河にざぶん。
しばらく流されたところで、主上たちが慌てて走ってくるのが見えました。でももう遅いですよ。私は平泳ぎでも潜水しちゃうくらい水泳がダメなんです。このまま0と1に分解されて消えていきましょう。
ほら、カワイルカが私を迎えにきてくれました。ちょっとポイポイダーに似てるかも。だんだん大きくなって・・・って、これイルカじゃなくてクジラですね。最期クジラに食べられるなんて嫌ですよう、とダッチオーブンを構えたところで意識が遠くなりました。

そこからどれくらい経ったでしょうか。
ぐぅうえっ!
奇妙な音と共に、堅い何かに体がぶつかって意識が戻りました。痛い痛いよ。死んでもまだ痛いなんて酷すぎます、って、私死んでない?
起き上がって辺りを見回すと、遠くに王城と港が見えました。どうやら海上の小さな岩礁に打ち上げられて助かったようです。微妙に凹んだダッチオーブンと歯がボロボロになったクジラも、一緒に打ち上げられていました。
この後の経過に関しては、救助隊の報告書に同じであるため省略します。

所感:主上許すまじ。


○冒険結果:完全失敗:得たお宝:デスペナルティ(なし):ユニークな結果:なし
コメント:むなしくて河に身を投げてさらに誰も助けないという大変なことになりました。


(著:一柳鈴子(robin))

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0