【SS】イベント09 物語で見る各国の戦争準備状況(その4)

「こ… この雪山のどこで見つけろというのですかと」
阿木高麻緒(あきたか まお)は驚愕していた。辿り着いたのはえ~藩国東にある山間部。戦時食の原料として、特産である福翠地鶏の卵を採取してこいとの任務である。

「卵自体は確かに養殖地鶏で賄える。でもさ、命を賭して戦地に赴く皆のためにはやっぱ少しくらいは最高級の食材で作ったお菓子も配給してあげたいじゃん?」
 それが、藩王花井柾之(はない まさゆき)からの言葉だった。
 お菓子…お菓子? それが戦時食か? レーションとして認められるのか? いやその疑問はご尤も。だがしかしお菓子を甘くみるな。いや、お菓子なのだから甘いのだけど。
 お菓子とは、基本的に高カロリーでまた多くの食材を使うことにより栄養も豊富、消化もよい。美味しいがために食べやすく、そして美味しいということは戦時に発生するストレスを癒す効果までありこれをレーションとせずしてなにをレーションとするかというほどに適したシロモノなのだばばん!

いや、話が逸れた。ともかくそのような訳で麻緒は一匹の犬士を共に授かりこうして福翠地鶏の卵を採取するべくやってきたのだった。
 基本的にえ~藩国の冬は厳しい。山間部などは雪が凄い。にも関わらずそんな雪山に地鶏とその卵を探してやってくる? かなりの命知らずな状況に麻緒は己の有り様を振り返っていた。
 まず、寮を出た時点ですでに雪が降っていた。だがそれは軽い粉雪でたいしたものではなく、また地鶏がいると聞いていたのできっとそこは温暖な土地なのだろうと気楽に踏んでいた。落ち着いて考えれば山間部なんだからそんなはずもないのだが気付きもせずにピクニック気分だったのだ。
 目の前は、見事なまでに雪景色。見渡す限りの白・白・白、そして白。ここのどこに地鶏がいるというのだろうか。
「私はいったいどおすれば」
 雪の上にしなだれる。うん、いっそ温泉でも掘り当ててお猿さんと一緒にのんびり休暇をとりたいような気分だ。いいなあ温泉。きっと身も心もとろけるかのように温まるだろう。すでに頭の中はトリップ状態。
『………。』
 そんな麻緒の肩をぽむと叩く犬士。その目が優しく麻緒に語る。
『仕事しれ』
「はい」
 暖かな眼差しに気力を振り絞り立ち上がると、麻緒は懐から一冊のガイドブックを取り出した。そう、こんなこともあろうかと福翠地鶏をゲッチューするための虎の巻を書店で購入してきていたのだ。その名も『絵で見て覚える福翠地鶏の見分け方』!!
「なんだかすごく間違えた感もあるのですが気にしない方向なのですよ?」
 犬士に向かって呟いて、本を開けばなんとそれなりにそれらしいことが書いてある。大丈夫、きっといける。この虎の巻によれば福翠地鶏は冬を越すため集団で巣を作っているという話。しかも集団生活のためこの時期に子を産む可能性が非常に大! これはつまり巣さえ見つければきっと卵も入手可能! なんと巣の発見方法だって書いてあるぞ?
「おおし、俄然やる気が沸いてきたのですよーっ」
 と、めらめら燃える麻緒の服を犬士がちょいちょいと引っ張った。
「おう?」
 犬士が示したのは虎の巻、その巻末の注意点。

『冬の福翠地鶏は大変気性が荒く、巣に迷い込んだら命の危険があるのでけして近寄らないように』

「ちょ、ほんと?」
 ほんと。

 翌日、ずたぼろになりながらもどうにかこうにかほうほうのていで背負い袋いっぱいに卵をおさめて帰還した阿木高麻緒と犬士の姿があったとか。

(著:阿木高麻緒(まお))

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